
新卒採用の売り手市場が続き、「初任給30万円」という言葉が飛び交うようになりました。大手企業が続々と賃金のベースアップをしている一方で、中小企業においては満額回答は容易ではありません。
一方で、物価高騰は続き、従業員の生活はひっ迫しています。
また賃上げしなければ、優秀な人材の離職を招き、企業存続に関わる問題に発展しかねません。
ところで、これほどまで景気の良い賃上げができる企業は、どれだけあるのでしょうか?
羽振りがいいのは一部の大手だけ
メディアから流れてくる「初任給30万円時代」の話題ですが、大幅に賃上げする企業の名前を見れば納得できるはずです。
例えば、山口県発祥の某衣料品店では「グローバル水準の少数精鋭の組織への変革」を目指すためとしており、入社したのならば、それ相応の実績を残さないといけないので、かなりの覚悟が必要となってきます。
また、就職したいランキングで常に上位にいる損害保険会社では初任給について転勤と転居を伴う場合に最大で約41万円に大幅に引き上げるとしていますが、転勤と転居を経験してきた私からすると、転勤が子育ての大きな負担になる
場合があるので、手放しで喜べる条件では無いです。
少し、話がずれますがコストコがオープンした際に破格の時給が提示されてました。
当然、応募が殺到したのですが、求められる作業量が多く、その厳しさに脱落した人が多かったと聞いています。
大半の人は時給が月並みに戻っても、働きやすい職場がいいと気づいた訳です。
名だたる大手企業が次々と賃上げを表明している…
とか
2025年春入社の新入社員の初任給は30万円時代へ…
と羽振りのいい話題だけがクローズアップされていますが、実際には一部の大企業だけで、ほとんどの会社が初任給は
「25万円未満」が実情です。
※株式会社帝国データバンクによる2025年4月入社の新卒社員の初任給についてのアンケート調査によると
初任給「30万円以上」と答えた会社は全体でみると1.7%
「20万~25万円未満」の企業の割合が62.1%で最も高く
「20万円未満」と答えた会社24.8%
85%以上の会社は初任給「25万円未満」という調査結果だったそうです。
賃上げ疲れに打ち勝つために
中小企業側も賃上げ以外のメリット(地元での働きやすさ等)を提供して優秀な人材を確保するなどの工夫をしていますが、足元で物価上昇が続く中では、賃上げは避けて通れない問題です。
どのように賃上げの原資を確保していけばいいのでしょうか?
1.収益性の向上とコスト削減
最初に着手するのがコスト削減だと思いますが、もう過去に十分に着手してきたことだと思います。
かといって、取引先に価格交渉をしたとしても、簡単に承諾してもらえないのが実情です。
業務効率化につながる機械設備やITツールの導入は効果がありますが、高額な費用がかかる場合があるので、そう簡単にいかないかもしれません。
※補助金や助成金の活用もありますが、活用したいスケジュールに添った使いやすい制度とは言い難いです。
2.収益状況の透明化と従業員との対話
次にやるべきことは収益状況の透明化です。
ここ数年の経緯を正直に伝えて、どう現状を乗り切るか、アイデア出しに参加してもらうのが目的です。
5年前の売上げ、利益を基準として現在はどうなっているのか?
借入れは増えているのか?(何故 借入れが増えたのか?)
その要因や背景を詳細に説明して不安を軽減しなければなりません。
今後、どのように会社を改革していくのか説明した上で、改めて、従業員の声を直接聞く場を設けることがとても重要です。
(全ての従業員から、望んでいる反応は無いと思いますが、不満を軽減させる効果は非常に大きいです)
対話の中で、
〇 過剰サービスになっている
〇 何が目的でチェックしているか不明
〇 新しく取り組みたい内容がある
これらの声を反映させた取り組みを打ち出すことが、未来への布石となります。
よく、柔軟な勤務体系や福利厚生の拡充が効果的と言われますが、一時的な効果はあったとしてもまた新たな要望が出てくることになります。
この「さじ加減」を分かった上で柔軟な勤務体系や福利厚生の拡充の見直しをする必要があるので、収益状況の透明化を図った上で改革に参加してもらう方が効果は非常に大きいです。
賃上げ疲れに打ち勝つためには、柔軟性と透明性が重要な役割を果たします。
大手のような満額回答ができなくても、誠実に対応し、従業員の満足度を高める工夫を凝らしていきましょう。
笑顔創造研究所は、みなさまの笑顔と地域経済を応援しています。